―第4楽章―

2/6

540人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
教室に戻ったが、正人の姿と彼の鞄がない。 友達に聞いたところ早退したらしい。 「大丈夫かな、正人」 「電話してみたら?携帯は持ってるでしょ?」 「でも、出ないかも…」 「じゃあ家にかけちゃえば?お母さんくらいいるわよ」 私はクルミに促されて電話した。 「もしもし」 〈はいはい、この番号はユンちゃんね〉 「おばさん、正人は帰ってますか?」 〈帰ってるけど…〉 〈あぁ!くそっ!〉 それは電話越しに聴こえた。 乱暴なピアノの音と、怒号。 正人の声だ。 〈ずっとあんな調子なの〉 「…分かりました。帰りに寄りますね」 あんな音、電話越しでも聴きたくない。 ますます心配になってきた。 「ユンナ、落ち着いて!今は授業を優先させよう。あいつは馬鹿だけど、弱くない。頭だってすぐに冷えるはずよ」 冷静にクルミは言うが、本当は落ち着いていない。 それは雰囲気で分かった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

540人が本棚に入れています
本棚に追加