―第4楽章―

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昼休みに至るまでに、私は何度か仁と話そうとしたが、クルミにそれを止められた。 今は何を話しても無駄だろうと彼女は言っていた。 そして、今、私たちは音楽室にいる。 クルミはフルートで《アルルの女》を演奏していたが、何だか物悲しい曲に聴こえた。 「一人いないとこうも違うのね」 そう言ったのは先生だった。 「何を弾いてもこんな感じなんですよ」 「じゃあ、気分転換にビデオでも見ない?丁度見てほしいものがあるの」 そう言って出してきたのは、《モーツァルト特集》と書かれたビデオテープだった。 「十年前のもので、今度の授業で使おうと思ってね。感想を聞きたいの」 話の内容なんて頭に入らなかったが、ただ唯一目に飛び込んだ情報があった。 それはニュース速報だった。 「先生…これって、十年前の…ですよね?」 「そうよ」 ニュース速報は、こう綴られていた。 《ウィーンの某空港にて、胴体着陸事故発生。死傷者現在確認中》 「クルミ…もしかして…」 「本人に聞くしかないわ!」 動揺する先生をおいて、私たちは駆け出していた。 向かう先は教室だ。
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