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教室に着いてすぐに彼の姿を見つけた。
私は仁に歩みより、勢いで問い詰めた。
「…記憶喪失なの?」
「単刀直入だな。そうだよ」
「どうして…どうして、正人にそれを言わなかったのよ!」
「言ったらどう変わっていた?それに、殴られてたならそれでもよかった。殴られるだけのことはしている」
「それでも…」
それでも、言って欲しかった。
それだけしか願わないのに…。
「泣くなよ」
「…泣いてない」
頬を何かが伝うが、それは汗だ。
走ったから流れているだけだ。
そう思うことにした。
「…何も…覚えてないの?」
「一つ、覚えてることがある」
「…!何!?」
「ジャングルジムと…キーワード」
「キーワード?何の?」
「さぁ?」
それは《見つけてね》の言葉に繋がるものだろうか。
答えは仁自身も知らない。
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