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翌日、放課後。
「どこに連れていく気だよ、おい」
音楽室は合唱部が使うため、私たちは正人の家の防音室を借りることにした。
「いいから来るの!」
正人は顔を合わせづらいらしく、一人で先に行ってしまった。
私とクルミは嫌がる仁を引っ張りながら、あの夕日の綺麗な公園の前を通って正人の家へ向かった。
「着いた!」
「入って!」
「…俺、暇とは言ったけど、来るって言ってないよな?」
『いいから入りなさい』
同時に言ったのが効いたらしく、渋々彼は防音室へ入った。
「何をする気…―」
仁の言葉を聞かず、私たちは楽器を構えて曲を始めた。
もちろん、仁にもらった、題名のない楽譜だ。
まず練習記号Aの部分。
ここは反応があった。
そしてB。
この場面には一小節目に不自然なフェルマータがある。
そこに差し掛かった途端、仁は怪訝そうな顔をし、ため息を着いて席を立った。
「ちょっと待ってよ!」
私は思わず演奏を止め、帰ろうとする彼を呼んだ。
「最後まで聴いてよ!」
「未完成の曲なんて聴けるかよ」
最初は意味が分からなかった。
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