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翌日。
いつも通り音楽室に行くと、二人が難しい顔をしてあの楽譜とにらめっこをしていた。
『おはよう』
「…おはよう」
あれからずっと、曲について考えていたが、結局何も浮かばなかった。
「…十年前、仁は何て言ってたんだっけ?」
「外国って遠いのかな?って言ってたのは覚えてる」
「公園で言ってたわよね」
「ユンナは泣くしな」
「正人、思い出させないで…」
「そんで、その後…楽譜渡されて…」
「仁はジャングルジムに登って…―」
「ちょっと待って…」
曖昧だった記憶が鮮明になっていく。
確か、仁は…―。
「石を…小石を持ってジャングルジムに登ったわ!尖った小石よ!私の足元にあったものを拾ったんだもの!間違いないわ!」
「小石を持って登って…どうするんだよ」
そこから先は考えてなかった。
けれど、昨日の仁の反応を見る限り、ジャングルジムに何かがあるはずだ。
「今すぐ公園に…―」
「無理だろ!もう工事が始まる!ジャングルジムも…もう…」
「心配要らない」
不意に、ドアの方から声がした。
そこには、仁の姿があった。
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