―最終楽章―

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「どう使うんだよ」 「これを練習記号に当てはめて演奏するんだ」 これでやっと、前に曲を聴かせたときの仁の反応の意味がやっと分かった。 曲にBの場面は要らなかったのだ。 「じゃあ…これで完成?」 「いや、弾き終わるまで完成しないだろ。…聴かせてくれるよな?」 仁の問いに、私たちは頷いた。 「聴きながら楽譜めくってくれよ」 「三人分もかよ。無理だって」 「嘘だよ。俺ら、もう全部覚えてるし。約束忘れてた罰だ」 「…正人だって忘れていたじゃないか」 二人もやっと昔のテンションに戻っていた。 「正人、早くピアノ弾いて。ここはピアノの音から始まるんだから」 「おう。じゃあ、始めるぞ」 曲が始まった。 観客は一人。 場所は音楽室。 特別な舞台ではない。 それでも、今だけは、私たちのステージだ。
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