540人が本棚に入れています
本棚に追加
/41ページ
曲は短かった。
けれど、楽しかった。
「完成!」
「約束達成!」
私たちは声をあげて喜んだ。
「短すぎだな」
「でも、6才の子が書いたなんて思えないよ!」
「…もっと膨らませよう。いつか、オケ用に書きたい」
「じゃあ、将来は作曲家?」
「兼ピアニストだな」
照れ臭そうに言う彼の横顔には懐かしさがあった。
「ねぇ、完成記念にタイトル付けましょうよ」
「いいな。仁がつけろよ」
クルミと正人が期待の眼差しを仁に向けた。
その視線に焦りを感じたのか、仁は目を泳がせていた。
「早く!」
「決めろ!」
「…せ」
「せ?」
「《青春協奏曲》…」
『…』
しばらく冷たい空気が流れた。
「くさっ!」
「ダサっ!」
「なっ…!今一生懸命出した名前だぞ!」
一つの曲をめぐって高校生4人は騒ぐ。
仁の記憶は全て戻っている訳じゃない。
けれど、この風景は十年前のあの日と似ている。
夕日に染まる公園で遊んだ、幼きあの日々と…―。
最初のコメントを投稿しよう!