―最終楽章―

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曲は短かった。 けれど、楽しかった。 「完成!」 「約束達成!」 私たちは声をあげて喜んだ。 「短すぎだな」 「でも、6才の子が書いたなんて思えないよ!」 「…もっと膨らませよう。いつか、オケ用に書きたい」 「じゃあ、将来は作曲家?」 「兼ピアニストだな」 照れ臭そうに言う彼の横顔には懐かしさがあった。 「ねぇ、完成記念にタイトル付けましょうよ」 「いいな。仁がつけろよ」 クルミと正人が期待の眼差しを仁に向けた。 その視線に焦りを感じたのか、仁は目を泳がせていた。 「早く!」 「決めろ!」 「…せ」 「せ?」 「《青春協奏曲》…」 『…』 しばらく冷たい空気が流れた。 「くさっ!」 「ダサっ!」 「なっ…!今一生懸命出した名前だぞ!」 一つの曲をめぐって高校生4人は騒ぐ。 仁の記憶は全て戻っている訳じゃない。 けれど、この風景は十年前のあの日と似ている。 夕日に染まる公園で遊んだ、幼きあの日々と…―。
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