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「あいつ…仁だよな?」
確認するように正人は私たちに尋ねた。
「そのはずだけど…」
雰囲気が違う。
昔は人の円の中心にいるような人物のはずなのに、今は人を寄せ付けない、一匹狼のようなオーラをまとっている気がする。
いくら十年も離れていたからといって、こんなにも変わるものだろうか。
それに、仁は私たちに気づいていないのだろうか。
何度か目があったはずなのに反応がない。
クルミや正人とも何度か目を合わしていたが、同じような感じだった。
「私たちのことを忘れてる…のかな?それとも、私たちが成長したから分からないのかな?」
「まさか。成長してるけど、正人は十年前から何も変わらないのよ?分からないはずがないわ」
「クルミ…どういう意味だよ」
「そのままの意味よ。ユンナは可愛くなったし、私も背が伸びた。あんたはどこが変わったのよ?」
「俺だって背ぇ伸びたっつーの!」
分からないだけならいい。
記憶に残っているはずだから。
けれど、あの反応は本当に《分からなかった》反応だろうか。
私には疑問に思えて仕方がない。
「クルミ、正人、話しかけてみようよ。分からないのかどうか確かめるためにね」
「そうだな」
言い合いを止めた二人と共に、私たちは仁の席へ向かった。
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