満月

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あぁ………。マズイ。 月が綺麗で、酔っ払いで…… 目の前にはいい男。 しかも……、私を口説いてるんだよ? マズイマズイマズイマズイ…… 頭の中をグルグル回る言葉。 多少、目も回ってる。 セイジの指が、私の頬に触れそうになる。 「あ……。ネコ」 セイジがピクッと反応。彼の指が、ブランコの鎖に戻る。 「ネコ、おいで」 『にゃ』っと短く鳴くと、私の足元にスリ寄って来た。 「………」 無言で私を見るセイジ。 ネコに邪魔されて、不服かしら。 「どうしたの?」 「……なついてるな」 「たまにエサやるからね」 「……俺にエサは?」 と、また口説きモードに入る。 私はネコを抱き上げ 「世話は1匹だけでいいわ」 そう言った。 「……やっぱ、変な女」 「誉め言葉だって言ったでしょ?」 セイジは軽く笑って 「猫好き?」 と煙草に火をつけた。 「適度にね」 「俺は好きじゃない……てか、苦手だな」 「アレルギー?」 違うと笑うセイジ。 ネコを見つめて、何と無く思いにふけるように言った。
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