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「目がね……好きじゃない」
私はネコの目を、じっくり見てみる。
「なんかさぁ、全部見透かしてる目ぇしてない?」
ふ~ん。そうかな?
私はネコの頭を撫でる。ネコは気持よさそうに、目をゆっくり閉じた。
「……本心、見られるの嫌なんだね」
「あんまり得意じゃないね」
さっきまでの口説きモードも、軽い雰囲気もなかった。
いい歳してチャラ男してるのは、それなりに理由があるのかもしれないな。
とにかく、微妙なシリアスさに、酔いもいい感じに冷めた。
「ま、いいわ。私帰るね。送ってくれてありがとう」
じゃあね、ネコ。またね。
とまた頭を撫でてやる。
「家、上げてよ」
セイジが立ち上がって笑う。あの軽さを含んだ笑い。
「……タクシー呼んであげるから、それまでね」
「わかった」
肩を並べて歩く。
この人をもっと知りたい。
今はそう思ってる。
また私は、ハマっちゃいけない人にハマるのかな?
「あの猫、仲良しなの?」
「かなりマブ」
「名前ぐらいつけてやったら?」
「ついてるよ」
「……?」
首を傾げるセイジ。
「ネコ」
大真面目に答える私。
「ベタだな」
また私の背中をバシバシ叩く。
「……それも誉め言葉」
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