タクシー

2/3
前へ
/233ページ
次へ
「……はい。……あぁ~、やっぱり……。いえ、待ちます。……はい、お願いします」 小さな街の週末。タクシーはどこも混んでいた。 3社に電話をしても、30分待ちは変わらなかった。仕方なく折れた時には、家に来てから20分経っていた。 1社目で折れてれば、もうすぐタクシー来てたな……。 「30分待ち、どこも一緒みたい」 「まぁ、週末だし。しゃあないね」 セイジが、出されたコーヒーにゆっくり口をつける。 なんてことないその仕草に、ついつい見入ってしまう。 「しっかし、男の部屋みたいだな」 部屋をグルッと見回す。 「もっと飾りなよ。女の子なんだからさぁ」 この男、すっかり馴染んだのか、元々の性格か……。 私が気にしてる事を、サックリ言ってくれた。 たしかに『女の部屋』とは言われませんよ!でもね、飾りたくないわけじゃない……。 「飾るの苦手なんでしょ」 ……正解。 「……よくわかったね」 「まぁ……、そこら辺は」 軽く笑って話出す。 何でも、私は自分の魅力をわかってないんだって。 もっとラインの出た服がいいとか、髪の毛の色も明るくした方がいいとか。 歳のわりに、落ち着いて見せすぎとか。 なんだかいろいろ言われた。 自分を飾るのが苦手だから、他の部分も飾り方がわからないんだろうって。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

601人が本棚に入れています
本棚に追加