さよなら

7/12
前へ
/233ページ
次へ
「悩む事ある?」 さらに突っ込んでみる。 「そりゃ、人間だからねぇ」 じゃあ、誰かの気持ちを真剣に考えて、それで悩む事はあるのかな。 「ユキちゃんは、そんなんで悩むの?」 『そんなんで』 セイジにとっての、人の気持ちの重さを言葉がそれ。 「私はいっぱい考えるよ。好きな人なら特に、いろんな考えとか知りたいと思うし」 あぁ、なんかうまく言葉が出てこないし。話が噛み合ってるのかすらわかんない。 私はただね…… 「セイジとちゃんと話がしたいの」 何の話かはわかんないんだけど。私はセイジを知る鍵が欲しいのよ。 「もう、逃げないで」 セイジを真っ直ぐ見る。 予想外に、セイジも私をちゃんと見ている。 「お前には参るな」 また予想外な反応。 笑ってるんですけど。 サヤカの指示があるからかな?指示があれば、嫌な話にも素直に応じる犬かよ。 「どうしてサヤカといたの?」 不器用さがにじみ出てるでしょ。 ソフトに言えないの。 「何でって、誘われたから」 不思議そうに答えるセイジ。 「誘われたら、誰にでも付いていく人なの?」 言葉がどんどん棘を持つのを、自分で感じている。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

601人が本棚に入れています
本棚に追加