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「えっと……ですね……」
私はまず、あの話をした。
サヤカと『彼』に騙されていた事と、その理由にもならない理由。
「だからね、この前セイジとサヤカが一緒のところ見て、また騙されるって思ったの」
セイジが私に手を伸ばす。
まだ早い!
「あとね!」
私はあえて大きな声で言った。
セイジと出会った直後、女の人と一緒に車に乗ってるのを見たところ。
電話を切られた日、香水の匂いがしなかった事。
あの帰った日から今まで、どうして連絡をくれなかったのか。そして何で普通に連絡してきたのか。
「セイジは何考えてんの?」
わかんないんだよ。全然わかんないよ。
「相手を知りたいと思うのは、少なくとも相手に好意があるから」
答えになってないよ。
「昔、好きだった女に言われた」
『好きだった女』
その言葉がチクッとした。
過去にヤキモチ妬くなんて。
「結局、フラレたんだけどな。こんなんだし……」
その時の彼女の言葉が、理解できなかった。
自分は自分で好きにしていたし、あいつはあいつで自分の好きな事をすればいい。
「そう思ってた。それで暇ができたら、一緒にいれば問題ないなんて……。適当だったんだな、俺は」
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