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「あいつは、俺の事をいろいろ聞いて……。それが束縛されてる気になってた」
セイジは煙草に火を着け、大きく煙を吸い込んだ。
私がいろいろ知りたがるのが、束縛に思われてるのかな。
私も煙草に火を着けた。
「違うのにな」
そう言って、私を見て微笑んだ。
はじめて見る表情。
「今になってわかるんだ」
どうしてかわかるか?
そう問掛けてきた。
「わかんないよ」
私は煙草を消し、目を伏せる。
セイジの香水の匂いが、私を包む。
「お前を『知りたい』と思ってるから」
「ちゃんと……、私の目を見て言ってよ」
セイジの腕に包まれて、セイジの顔が見えない。ただ心臓の音が、いつもより早い気はするけど。
そんな反応、予定外だよ。
「んな事できん」
そう笑う。
私は無理矢理顔を上げて、セイジを見ようとした。
「見るな」
そう言って、目を覆い隠された。
でもね、このまま無し崩し的に、私の質問に答えないなんて許さないんだから。
どれだけ悩んだと思ってるの?
セイジがこっちを向いてくれたのは嬉しい。すごくね。
だけど、胸につかえてる『何か』が完全に晴れないと、一緒にいても……ちょいちょい思い出しては苦しくなっちゃうんだよ。
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