601人が本棚に入れています
本棚に追加
「……うん。そうだね」
やっと笑ったサヤカに、昔の懐かしさと、軽い苛立ち。
やっぱり、許しきるなんて到底無理な話なのよ。
「約束だったんだ。結婚するのは」
そう言ったサヤカに、何とも言えない感情が湧く。
私をハメる代わりに、自分の一生をかけたってわけだ。その根性を、私に晒したのは……
「後悔してるの?」
あっさりとうなずくサヤカ。
バカじゃねーの?
と言いたいのを、グッと我慢する。我慢しろ、私。
「そっかぁ。旦那向きな人じゃなさそうだけど……」
なんてね。
「そうなんだよね。稼ぎがいいだけで、決めちゃったからさぁ」
だいぶん酔っ払ってきたみたいだね。不満が出てきたわ。
やっぱり、愛がないと一緒にいてもダメなんだ。なんて語るサヤカに、軽い嫌悪感が湧くのを押さえられないでいる。
あーぁ。やっぱ私は、ドス黒くなっちゃったのかな。サヤカが言葉発する度、心の中でバカにしてるもん。
でも、この表情変わらないな。
「他に好きな人できたんでしょ」
相手はセイジだろ。
あんたとは付き合い長かったんだ、それぐらいはわかるんだよね。
自分がどんどん嫌な女になるのを感じながら、私はただ、酒を飲むのさ。
最初のコメントを投稿しよう!