名もなき勇者の物語

エデンの日々

低く呟くような声で尋ねられた言葉に、エデンは首を傾げた。
自分は何か言っただろうか。考えてみても思いあたらない。

そんな仕草から、エデンの心情を読み取ったのか、男は口の端を持ち上げた。

「何かが起きている、と言っていた」

少しの間記憶をさらい、先ほど呟いたのを思い出した。…あれを聞いていたのか。

「それが何か？」
「お前は気づいているようだな。そうだ、この世界に何かは起きている。そしてその“何か”によって、この世界は滅びるのだ!!」

大袈裟に手を挙げて、どこか恍惚とした表情で男は言い放った。

…一瞬言われた意味が分からなかった。