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女はゆっくりと水面に向かって歩いていく。
真っ直ぐ、瞬きする間も惜しみながら。
汗を掻いている。
力が入りすぎた拳が、女にそう伝える。
今更気がついた。
体が酷く震えている。
集中してみると、鼓動の飛び跳ねる音が耳の奥に大きく響いた。
心臓が唸る度に、体中に強く血液の流れを感じる。
水面に近づくに連れ、それは大きく鮮明なものへと変わっていった。
ドクン…ドクン…ドクン…と、自分の存在を自分に表し続ける。
おかしくなるかならないかの狭間で、ふらつく足をゆっくりゆっくり水面に向かわせた。
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