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「―――!!」
莉禾の目の前には、城下が広がっていた。
ただしこの街、燃えている。
城も、民家も、畑も、全て燃えていた。
まさに火の海。
莉禾の視界は真っ赤に染まった。
城下は見渡すと、人がいた。
逃げ惑う人々と、それを追いかけ殺す人々。
リアルな戦場を目の当たりにした。
「あつい……!」
莉禾は目の前に広がる光景と暑さにたえかねて、森に向かって走り出した。
「急げ!急いで逃げな!」
「!?」
そのとき、女の声を聞いた。
声のした方を振り向くと、子供を連れた女を見つけた。
「行け!森に逃げるんだ!ずっとずっと遠くに逃げるんだ!」
「…かぁちゃん…?」
「お母ちゃん、足を怪我してもう走れねぇ。ここにおったら、お前まで殺されちまう。早く森の先へ逃げるんだ」
「うん。じゃあ行く」
「いい子だ。ほれ」
母親がそう言って手を離すと、小さな女の子は森だけを見て歩き出した。
女の子は振り返ろうとはしなかった。
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