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時刻は21時。寒さで手がかじかむ。フゥーと息を手に吹き掛けながら最後の一台を見送った。
……なんか、つまんねー。
まひるの表情は暗く沈んでいた。
「お先です」
ボソッと言いバイト先を後にする。
自転車の側に人影が見えた。
一瞬、胸が高鳴る、まひる。
「お疲れ」
期待通り、そこには瞬がいた。
「オメー、ストーカーかよ」
その口調の割に不思議と気持ちが高ぶる。
「ストーカー。かもな。ちょっと付き合ってくんない?」
車のキーをジャラっと見せ車に乗るように促す。
何のためらいもなく瞬の車に乗り込んだ、まひる。
……あ、この香り。
まひるは、少し照れ臭さそうに瞬を見た。
「わりぃな。お前に逢いたくなって。それよりメールの返事ぐらいくれよ」
「あ? メール?」
まひるはズボンのポケットから携帯を取り出した。
薄暗い車内に小さな光が点滅していた。
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