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深い深い山奥にその村は存在した。
意外にも都会の近くの山なのだが、地図にも記されていないせいなのか、その村を知る者はごくわずか。まさに、灯台元暗しとはこの村の事だろう。まして、行った事のある者など全国でも10人に満たないのではないだろうか。
しかし、村の歴史は深く、江戸時代にはすでに存在していた。その地域の歴史を記した書記によれば、当時はもっと大きな村で、村民も1000人を超えていたそうだ。
四方を山に囲まれた村は山からの恩恵を受けていた。そのせいか、村民はいつからか“山神様”と呼ばれる山の神を信仰するようになったという。
しかし、その村にはある風習があった。
“いけにえの儀式”。
3年に1度、16~18歳の少女の中から1人、山神様に捧げるのだ。
この儀式が影響したわけではないが、村は次第に衰退を始めた。1000人を超えていた村民は時代と共に減り、いつの間にか100人を割りそうな程にまでなっていた。
だが、村は消滅する事はなく、存続していた。
風習の火種を残したままに――。
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