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その後、身元の判明した死体は、夕刻が近づく頃には遺族の意向で村の墓場に若者達によって埋葬された。
鎮痛な面持ちの遺族を見て若者達は心を傷める。そして、その足で村長の家に向かった。
村長の家は村で一番立派で大きな家で、誰が見ても権力のある者が住んでいる事がわかる。
その中で、村長と若者達が机を囲んで激しい討論を交していた。
「村長、これ以上は犠牲を増やすだけです!山神様の怒りを鎮めるには、あの儀式をするしかないんです!!」
熱く主張をするのは、最も体格のいい村の若者衆の長、ショウスケだ。
「確かに緊急事態じゃが、しかし、なぁ……」
ショウスケの言葉に、村長はしわがれた両手で年老いた顔を一度覆うと、明らかに迷っている表情を見せた。
その表情を見て、普段は口数が少ないケイタロウが口を割った。
「村長のお悩みはよくわかります。しかし、このままでは村民全員が山神様に殺されかねません。やはり、“いけにえ”を差し出しましょう。それが最前策です」
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