名誉なこと

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いけにえには決まり事がある。 それは、“村の16~18歳の少女であること”だ。 この、いけにえの条件を満たした者は、現在、この村にただ1人。 それが、ミサキだ。 ミサキは父、母、祖母の4人暮らし。普段は母の薬剤調合の仕事を手伝いながら暮らしている。 そのミサキの家に村長がやってきて、山に薬草を取りに行っているミサキ以外の家族と話をしていた。 「頭を上げて下さい、村長様。山神様のいけにえに捧げられるなんて名誉な事です」 と、母親の言葉。 家族の猛反対を予想していた村長は深々と頭を下げていたのだが、家族の意外な言葉に驚いたように顔を上げた。 「ミサキが山神様のところにつかえられるなんて、ミサキにとっても我が家にとっても大変な名誉。もうすぐにミサキも山から戻るでしょう。ミサキも、きっと喜びますよ!」 と、ミサキの祖母が満面の笑みで村長を見る。 以前から、いけにえを捧げた家には大変な名誉が与えられていた。 そう教えられた父も、祖母の言葉に腕組みをしたままうなずいた。
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