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「……ッ」
強烈な痛みに悶絶する暁を尻目に歩は椅子から立ち上がって瑞穂の方に歩み寄った。
「暁さんの言う通り、当面は俺が君を守るから心配しなくて良いよ」
「そう…だよね…」
歩の言葉を聞いても心配そうな瑞穂の声音はどこか怯えた様に震えていた。
そんな彼女の不安を悟った歩の口許に柔和な笑みが浮かぶ。
歩は瑞穂の前で立ち止まり、スッと静かな動作で跪いて頭を垂れて言う。
「この命、尽きるまでお守り致します」
瑞穂は突然の行動に歩は慌てふためいた。
「あっ…歩君…?」
「なんなりとご命令を我が主」
歩は僅かに顔を上げて瑞穂の顔を見上げた。
「えっ…?」
「貴女は今、星の数ほどいるミュータント達が恐れて止まない死神と言う名の最強の駒と、世界を掌握する超人の標を手にしました。貴女が求める物で手に入らぬ物は何一つありません。貴女は全てを手に入れる事が出来る。富も権力も財産も、世界ですら」
大袈裟な事を言っていると瑞穂は思っているが、目の前の少年の目は明らかに本気さを示しているかの様にギラギラと輝いていた。
「決して冗談なんかでは無いよ」
暁が突如口を挟むと瑞穂は兄の方に向き直った。いつものお軽い口調などでは無く、至って真剣さが溢れる様な口調だった。暁は更に続けて言う。
「白銀の死神と謳われるミュータント月村歩の武力行使、超人の標によって編成されるミュータントの軍隊。この二つがあれば、世界を相手にしても余裕で勝利出来る」
暁の言葉に瑞穂は思わず愕然とする。世界を相手にしても余裕で勝利出来る力を持つと聞いて、自分に跪き頭を垂れて忠誠を誓う少年の存在に驚きを隠せないでいたのだ。
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