小珠の事情

6/7
前へ
/120ページ
次へ
○海根家・ダイニング(夜) 食卓を囲んでいる小珠、美鈴、小珠の父、海根芳蔵(58)。 海根「近所の人が、お前を見かけたって言ってきたぞ……何をしてるんだか知らんが、昼間からあちこちほっつき歩くんじゃない」 小珠「……だって、琉珂を探してたんだもん」 海根「……」 海根の表情が曇る。 美鈴「あのね、小珠……」 海根「……」 美鈴に目配せする海根。押し黙る美鈴。 海根「まだあんな訳の分からんヤツとつきあってるのか?」 小珠「いいじゃん、べつに……」 ふて腐れる小珠。 海根「この不景気の中、そんな仕事が安定しない男とつきあったっていいことないぞ」 小珠「不景気とか関係ないし……どうして、すぐそういう話になるわけぇ?」 海根「そいつは、ホントに小珠のことを大事に思ってるのか?」 小珠「決まってんじゃん、そんなこと」 海根「いまだに家にも挨拶に来ないが……その程度のつきあいなんだろ」 小珠「琉珂は忙しい人なの……あたしともそんなに会ってくれないし」 海根「いくら練習で忙しいからって、少しくらい時間は取れるはずだ」 小珠「いいじゃん、もう……娘に干渉しすぎの父親って最悪」 席を立つ小珠。 海根「……探していたとかいったが、どこかにいなくなったのか?」 小珠「お父さんには関係ないから……」 憤慨し、自分の食器を片付ける小珠。 閉口する海根。
/120ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加