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「あなたが、私を、好き?
私が、あなたと、付き合う?
到底理解出来ません」
俺は今窮地へと立たされていた。
この、目の前の女は誰だっけ?
あぁ、顔は可愛いけど真面目で有名な蓮見沙羅(はすみさら)だっけ。
いや、知らない。
こんな女は知らない。
事の発端は5分ほど前に遡る。
昼休憩が始まって間もなく、俺達は図書室の近くのあまり人気のない廊下に立っていた。
「彰、次の角を曲がって来た女に告白しろよ」
どんないきさつでこんなことを画策したかなんてもう覚えていなかった。
それはただの悪ふざけで、冗談。
そもそも親友の高杉健二(たかすぎけんじ)と、笹原祥(ささはらしょう)と一緒になってこんな遊びをしようと思ったのが間違いだった。
それでも、俺は女にあまり興味はなかったけど、来る者拒まず去る者追わずで、正直結構モテる方だったと思う。
フラれたことなんて、なかった。
そう、自分に自信はあったんだ。
この時はそんな俺の鼻っ柱を折られることになるなんて予想もしてなかった。
「あ、誰か来たみたいだ」
静かな廊下の曲がり角の先から微かな足音が聞こえて、
祥は不自然ではない程度にその先から歩いて来る人物が女かどうか確認する。
手で小さくOKを出した祥を見た後、俺はニヤつく健二に背中を押されて、調度角を曲がって来た女の前に押しやられた。
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