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「好きだ」
俺は何が起きたのかわからずに、
もう一度、そう言った。
聞き間違いならどんなにいいだろう。
だけど目の前の女は真っ直ぐ俺を軽蔑したような目で見ていて、俺は振られたんだと認識する以外出来そうにない。
確かに俺に蓮見への愛はないけれど、フラれたくはなかった。
簡単には引き下がりたくなかった。
それが只のくだらないプライドだったとしても。
「…私をドロッドロの世界に放り込むつもりですか?あなたみたいな噂の絶えない人と付き合ったら私の平穏な学校生活がなくなってしまうんですよ。女の嫉み、嫉妬のど真ん中に私を立たせたいとおっしゃるんですか?」
真っ直ぐ蓮見を見つめていたら、蓮見は真っ直ぐ、物怖じすることのないような強気な視線を俺に送ってそう、
一息で言い切った。
何、俺ってそんな人気あったんだ…ってそんなこと考えてる冷静な自分に
そんな暇ねぇだろ、なんて突っ込んでみる。
あれ?
ってことは俺…
やっぱり
「フラれた?」
そう頭が完璧に理解した時には蓮見も親友二人もいなくなってて、コノヤロー後で覚えてろよなんて思ってみたり。
それでも今俺の頭を占めるのはフラれたと言う事実だけ。
初めて、だった。
そもそも自分から告白したのは初めてなんだから当たり前って言えば当たり前なんだけど、それでも誰かに拒否されること自体が初めてだった分、ショックも大きかった。
別に、最初から本気じゃなかったんだと開き直って悪態ついてみても、只の強がりでしかないことに気づいて
そんなことするくらいなんだったら親友二人に愚痴って慰めてもらった方が幾分かマシと言うもので。
「下らない」
誰もいない、静かな廊下の真ん中呟くように吐き捨てたその言葉は本当に只の負け惜しみだったのかもしれない。
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