刑法第185条 賭博

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「彰(あきら)おかえり」 「見事なフラれっぷりだったな~。ってことで賭けは俺たちの勝ちな」 ニヤニヤとしながら、後でジュース奢れよなんて言う健二と祥を恨みがましい目で見やってわざと大きな音を出して椅子に座った。 賭けに負けたことの悔しさか、今同じ空間にいる蓮見への当て付けか。 まぁきっと後者なんだろうけれど。 「まー元気出せよ。俺は真奈美一筋だもんね」 いきなりの惚気に、さっき振られたばかりの俺の心はイラッとした。 彼女の畑真奈美(はたまなみ)と、祥は誰がどう見てもバカップル。 学校公認って言っても過言じゃないだろう。 明るくて可愛い顔をした真奈美はとくに、女子から人気がある。 そんな真奈美の側にはいつも蓮見がいて… 蓮見、がいて…? 「じゃー俺ちょっと真奈美んとこ行って来るな」 「…俺も行く」 背中を向ける祥と、それについて行く健二の背中に向けて、ふてたようにそう言えば二人は可笑しそうに声を出して笑った。 何が可笑しいんだ!! 「真奈美っ」 語尾と祥の周りにハートマークが飛んでそうな勢いで祥は蓮見と話していた真奈美に背中から思いっきり抱き着いた。 蓮見はそれを特に気にした様子もなく見て、笑った。 笑った? 「沙羅、今日も可愛いな」 「健二いたんですか?」 「失礼な奴だな」 クスリと手で口許を押さえて微笑むように 笑っ…た? 今思えば蓮見が笑ったのも、蓮見の声聞いたのも初めてで、意味もなくそんな笑顔にドキっとしてみたり。 そう言えば恋はギャップで始まる確率高いとか誰か言ってたっけ。 なんてどうでもいいようなことを考えて、本当にどうでもいいことに気付いた俺は考えることを止めた。 そんなことより 「健二、蓮見とそんな仲よかったっけ?」 そんな純粋な質問に返って来たのは健二の悪戯っぽい笑顔だけだった。
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