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私は史也さんの腕に軽く触れる。
「史也さん、私は一人でも大丈夫ですよ。家は学校から近いですし、陽も伸びてきましたから」
「分かりました」
「なら良かったで――」
「毎日、長谷川さんに迎えに行かせます」
史也さんの中では良い解決方法なのか、得意気だ。
「そんな事しなくて平気です」
「だめです。長谷川さんを行かせます」
その後、いくら断っても受け入れてもらえなかった。
意外と頑固だなぁ……
次の日から長谷川さんが迎えに来て、徒歩十分という短い道を車で帰る事になってしまった。
「俺は運転手になったつもりは、ないのですがね」
「……すみません」
悪態を吐く長谷川さんに、私は謝ることしかできない。
「いいえ、千夏さんは悪くありません。全て社長が悪いのです。いつものことですが。それに『自分が迎えに行く!』と言わなかっただけ良かったです」
結構振り回されているんだなあと、同情してしまったのは誰にも言わないでおこう。
怖いしね。
END
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