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こんな覚醒夢を見た。
私は中世の教会前に立っていた。
凝った装飾の扉を開くと、荘厳な雰囲気を持つ祭壇の方から女性のうめき声が聞こえてきた。
近寄ってみると美しい金髪の女性が祭壇の上で横になって苦しんでいる。
苦しんでいる理由は一目ですぐに分かった。彼女は妊婦だった。
聖母を思わす顔を苦痛にゆがめ、両手で大きな下腹部を押さえている。両膝は立てており、今にも赤ん坊が生まれ落ちそうな様子だ。
どうしたらいいのか途方に暮れていると、下唇を強く噛みすぎたせいか彼女の口の端から血が流れているのが見える。
噛み切ったら大変だと思い、適当な物がないので左手を彼女の口に入れた。
その瞬間、ゴロッという音と共に彼女の長いスカートの間から通常の三倍の大きさはある嬰児の頭部のみが転がりでた。
私は凍りついたように動けない。
目の前で灰色をした嬰児の頭部が泣き始めた。
すると、泣き声に呼応するかのように、女がゲタゲタと笑い始めた。
美しい顔を狂女の笑いに変貌させ、大口を開けて笑っている。
彼女が笑う度に、左手の薬指が白い綺麗な犬歯に軽く挟まれた。
指を噛みちぎられるという妄想に貫かれた瞬間、私は目覚めた。
寝汗をかいている自分をベッドの中に見つける。
二日酔いの頭が重い。
私は女の歯の感触を残す左手の薬指をみた。
そこには結婚指輪が輝いて見えた。
私はすばやく指輪を抜き取ると、怒りにまかせて投げつけた。
指輪は音もなく壁に当たると視界から消えた。
枕元に転がってるバーボンを取ろうと手を伸ばすと、視界の隅に紙切れが入り込んで来た。
その離婚届と書かれた紙をひろって引き裂く。
さらに両手で小さく丸めて口に放り込むと、バーボンの熱とともに飲み下した。
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