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二十歳の成人式で故郷に帰ったおり、亡くなった母親にこの話をしたところひどく驚いていた。
なんでも赤ん坊の私が、縁側から石段へと頭から落ちてしまったというのだ。
額から大量に出血し、ぐったりとしていたので最初は死んでしまったのかと思ったそうだ。
「その話を聞いた時に分からず、二十年近く経ってから思い出すのがおまえらしい」
もしも母親が生きていたら、そう言って笑ってくれたのだろうか。
今でも晴れた日に暗い室内から窓外の風景を見ていると奇妙な感覚に陥ってしまう。
母親と死の記憶だ。
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