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その世界は魔法で溢れていた。例えば明かり、例えばエネルギー、例えば医療、誰もが魔法の恩恵を受けていた。
この世界を構成する魔人や人は互いに干渉することなく、各々の住まうべき所で穏やかに平和に過ごしている、理想的な世界だった。
かといって、まったく交流がないわけではなく、魔人が人間の街に居ることもあれば、人間が魔人の町に居ることもあった。互いに持ちつ持たれつの生活だったのだ。
誰もが憧れるようなファンタジーの世界、街や森や山や海の全てが、まるで絵本の中の世界のように光り輝いていた。
やがて、人間は知恵と魔法とを融合して科学を完成させた。飛空船や汽車が最たる例ではないだろう、人間たちの生活は日に日に豊かになっていった。
街が国になり、国が大国になっていった。つまり、バラバラであった人間という生き物が一つにまとまっていったのだ、ごく自然的に。
その自然的な流れは魔人にも訪れた・・・、大きく歪んだ形で。
人間の国を王国と表したのに対し、魔人達の国は帝国と表された。
王国は華やかなものだった。明るく、賑わいの耐えない国だった。国王の下に一つとなった人間は、学び、知恵を出し合い、より良い世界にしようと努力を怠らなかった。
それは、王家の人間が良かったというのもあるが、純粋に彼ら人間の気質のようなものなのだろう。
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