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それに気づいたように影は前足をスッと伸ばして白い肌を優しく撫でた。その優しさを愛しむ様に手を重ねて目を瞑ると、何かを決意したように大きく息を吸って、そして吐き出した。
「そうですね…、あなたが白い羽を失って以来きちんと会ったことはありませんでしたね。いつも逃げてばかりで・・・」
「オーディリア様、その話は止しましょう」
辛そうに話すオーディリアの頭を何度か撫でて、優しく微笑んだ。だが、影が名前で彼女を呼んだことで、二人の心の距離は遠いものになってしまって、オーディリアは優しさ以上に寂しさを感じていた。
二人の間にある悲しい過去のお話。影が親友と白い羽を失い、オーディリアが兄と最愛の人を堕してしまった哀しい争いの物語。しかし、それはまた別のお話、いずれまた。
「あなたは、昔から変わらずお優しい」
その言葉にユーディリアは口を噤んでしまう。
それを眺めて目を細めた影は手を引っ込めると、また優しく言った。
「あなたがこちら側に長居するのはよろしくないのではありませんか?」
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