第一章《剣と魔法と》

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 人影の無くなったベランダで、黒い体を冷たい石造りの手すりに預けて、ジンワリと染みてくる夜の爽涼がパッと目を冴えさせた。  しばらくジッとしていると、ベランダに誰かが出てくる気配がして、ガラス張りの出入り口に目をやる。すると、そこには見たことのない少女が立っていた。  こちらを眺めている少女は見た感じユーディリアより二三歳年下くらいで、ちょうど15歳くらい。短く切られた藍色の髪に整った顔、スラッとした四肢に出る所と引っ込むところ、一つ一つのパーツが洗練された人形のように整っていた。  黙ったまま動かない少女を放っておいて、頂上を越えたばかりの月に視線を戻した。 「そこ、そんなに座り心地が良いの?」  突然、話しかけたのは少女の方だった。  あっけらかんとした顔で手すりに歩み寄ると、自分と大きさの変わらない黒い動物に話しかけたのだ。  怖くなかったと言えば嘘になるが、それ以上に好奇心の方が強かった。  だが、黒いそれは見向きもせず、うんともすんとも言わず、ただ月を眺めていた。その姿は神に仕える聖獣のような幻想すら抱かせた。 .
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