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一日に二人が珍しいほど人が来ないのか、と少女は思いつつ、なにやら可笑しい事に気が付いた。「一日に二人」と言っていたマスターの言葉に首を傾げ、考えに耽って、あたりを見渡す。
三つあるテーブル席にも、八つ並んだカウンター席にも自分以外の客の姿はなく、店内にはマスターと自分の二人以外の人影は無かった。
「マスター、二人って私以外にお客さんなんて・・・」
思い切って少女は言ってみた。
マスターももう歳だし、とうとう来てしまったのではないか。とも考えて、万が一のときは自分がこの喫茶店を切り盛りしよう、とまで勝手に思っていた。
すると愉快そうに、ホッホッホッ、とマスターが独特の笑いを漏らすと、いよいよ少女は分からなくなった。
何度見回しても他に客は居ないし、否に愉快なマスター、いつもとなにやら雰囲気の違うような気がしてならない。客が居ないのはいつものことなのだが・・・。
「まったく、最近の若い者は常識を知らないらしいな」
好青年の様な男爵の様なイメージのする、マスターのとは違う声が少女の耳に流れ込んできた。
その声に驚いたのは少女だけで、マスターは顔色ひとつ変えずコーヒーをカップに注ぐ、そして、ミルクの入ったティーカップをカウンターに置いた。
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