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あたりを見渡しても誰も居ない、また首を傾げると、マスターに入れてもらったコーヒーを手にとって口をつけようとした。その時、何やら不思議な視線を感じて、ティーカップの置かれた右側に目を向けた。
驚いたのは言うまでも無かった。
そこに居たのは、黒い毛をした猫だった。
両目の色の違う、燃えるような垢眼と碧空を思わせる蒼眼、不思議と吸い込まれるような感覚さえ覚えるその両目から目を背けることが出来なかった。
「ふむ、腑抜けた顔をしとるのぉ、小娘」
「男爵、彼女の反応が普通なのですよ」
「ふっ、馬鹿馬鹿しい。この小娘が普通で、この私が普通でないとでも言うつもりか?」
まるで、見下したように話す黒猫に、ヘコヘコと頭を下げるマスターが異様な光景であることに少女は混乱し、どつぼに嵌まっていった。
何度考えてもやはり、思考が追いつかない。
「猫が・・・猫が・・・、しゃっしゃ・・・喋った・・・?」
「何じゃ小娘、私がそんなに珍しいか?」
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