第一章

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   しかし、ほぼ確信したのは、サンタだけではなく人間からは糸の数と伸び方が尋常じゃないということだ。  妹から伸びる糸、それはやはりサンタと同じように多数多様だった。  見れば、自分から伸びる糸の数本が忙しなく動いている。その内の一本は、先ほど妹と繋がっていたのは確認している。そこからある程度の『意味』を予想出来たが、完全にはわかるはずもない。  まあ、何にせよ、この状態で人の多い場所に出たら精神が狂いそうになるかもしれないことは、何となく予想できた。 (学校はおろか、外に出るのも億劫だな……)  病院に行くことすら出来ないでいた。つまり、手っ取り早いのはあの女の子を問いつめることだ。 (どこに居るかもわからないのにか?)  昨日の雰囲気では、向こうから接触してくる可能性は高かったが、だからといってぶらぶらしていて見つかるわけでもないだろう。 (くそ、どうすりゃいい?)  悩めど答えは出ず、とりあえず着替えることにして、自分からタンスに線が一本伸びたのを宿敵を睨むような目で確認した。  とりあえず、この糸に慣れるためにも家の中を歩いて回ってみた。母親にも出会ったし、水槽の亀も通常営業していた。   10分くらいで、一度吐いた。夜中よりも活動的な分、糸が蠢いて単純に酔いそうになる。そうでなくとも、蜘蛛の巣を連想させる気味悪さなのだ。  慣れれば生活出来るんじゃないかと思ったが、無理そうだった。  そして気づいたことがある。どうやら、視界に入っているもの、もしくは自分自身から伸びる糸は遮蔽物を関係なくどこまでも伸びているようだが、それ以外は遮蔽物を越えてこないようである。  つまり、壁の向こうにいる妹に対しては、サンタ自身から糸がのびているが、妹から伸びる糸は、その一本以外壁を通り越してこちらの視界に入ることはないということだ。それは、他の物体にも共通して言えることだった。  つまり、なるべく何もない空間にいれば糸は極力見ずに済むというわけだ。  
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