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とは言っても、そんな生活出来るわけもなく、それが解決策というわけでもなかった。
目を細めたり、片目を瞑ればそれだけで結構糸の数は減ったが、先ほどようやく覚醒した妹に変な目で見られたばかりだった。だから止めておく。
などと思っている間にも、妹が勝手に部屋には行ってきたかと思うと、何故かサンタの傍らで読書を始めていた。
視界に入る糸が鬱陶しくてたまらない。頭がおかしくなりそうだった。
このままでは、本当に何もないような清潔な部屋に送り込まれてしまう。
「そいつは勘弁だ」
「ん? なんか言った?」
「いや、何でも。つーか、本持っていって良いから出てけ」
許可を出すと、妹は本棚から続巻すべてをごっそりと抜き出して、自分の巣へと戻っていく。
今ではサンタの本棚は、人気作品しか置いてない本屋のような有様だ。もしくは、伐採しすぎた林だ。
「今度あいつの部屋から回収してこないとな」
ひとりごちて、また思考に耽る。せめて、このことを相談出来る相手はいないかと考え、ふと一人の顔が浮かんだ。
糸にまみれた携帯電話を想像しつつ、目を細めて取り出してみたが、意外にも糸は想像していたより多くなかった。
液晶はとんでもないことになっていたが、画面を見ずとも短縮番号でコールすると、しっかり繋がった。機能自体に支障はない。
しばらくして、相手が電話口に出た。
『シネ』
衝撃の第一声だった。
「死ねはどうかと」
『オイお前、今何時だ?』
「寝ぼけてんの? 朝の七時半だ」
『よし、七時半だ。ああ、そうだ。寝ぼけててもおかしくない時間帯だ。そんな時間帯にも関わらず、電話をかけてくるのはどこのどいつだコンチクショー』
寝起きとは思えぬほど流暢に言い終えて、そしてコロリと声を変え、
『で、何の用?』
「相変わらず変な奴だな」
そう。変な奴だった。サンタが今抱えているトンデモ話を相談してやろうと思えるくらいには変な奴だった。有資格者だ。
「いい友達持ったなぁ……」
『え、なに、そう?』
しみじみと呟いたサンタの言葉に、電話の向こうで照れてる様子が手に取るようにわかる。良い関係を保つために真実は黙っておこう。
「実は相談したいことがあるんだ」
『ん、いいけど』
「即答だな。まあ、ありがたいけど」
『電話じゃなんだし、会おうか。最近会ってないし』
「おう……あ」
『どした?』
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