第一章

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   インターホンを押すと、内線に繋がることもなくドアが開いて、一人の少女が出てきた。  パジャマと思しき着衣の上に薄手のカーディガンを羽織った姿で、サンダルを履き、眠そうな顔で来訪者であるサンタに視線を注いでいた。  ポニーテールにまとめあげた髪を揺らしながら、表玄関まで歩いてくる。 「いらっしゃい」  やわらかいソプラノは、格好と表情とは裏腹に凛と冴えていた。 「待ってたよ」  それがサンタの友人だった。  パジャマと思しき着衣とカーディガンは別に私服というわけではなく、本当にパジャマでカーディガンだ。眠たそうな目つきはいつものことだし、サンタが来るとわかっていたから髪もちゃんと結って眠気もしっかり吹き飛ばして出てきたのである。  つまり、目の前の人物はこういう奴なのだ。 「せめて着替えてくれよ」 「だって、家なら別にいいかと」 「でも髪は結うんだ?」 「だらしない格好は見せられません」  パジャマにサンダルで友人を迎えるのはだらしなくないのかというツッコミは必要ない。何故なら、やはりそういう奴だからだった。  それが小学校からの友人である、スルナのいつもの姿だった。  しばらく会っていなかったのだが、変わりようの無さに、サンタは何故だかほっとした。 「どうぞ中に入りんしゃい」 「おう。朝っぱらから悪いな」 「まったくだ。誰もいないからいいものの」  これもいつものことで、土曜日はスルナしか家にいないのだ。両親は共働きで、兄はサンタの通う学校の生徒会役員だった。土曜日は常に学校に駆り出されているのは、同じ学校に通うサンタの方がよく知っていた。 「つーか、誰かいたら来ないって」 「それはつまり狙ってるってこと?」 「違うから」  スルナに促され、サンタは家に上がらせてもらう。久々に入る家も大きな変化はない。スルナの部屋の位置も同じだった。  部屋はパステルカラーに統一され、爽やかさと僅かなファンシーさが、スルナの可愛らしい容姿には似合っていたが、性格とはかけ離れていて、その辺もどこか不思議だった。 「じゃあ、お茶持ってくんね」 「ああ、お構いなく」 「どこで覚えたの、そんなセリフ」  軽く微笑んで、スルナはいったん部屋を後にした。  
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