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てきとうな場所に腰を下ろし、そして一息つく。
予想はしていたが、やはりスルナの身体からも糸が伸びていた。
今更驚きはしないが、何だかあまり良い気分でもなかった。まあ、それを相談しに来たのだが。
(相談してどうにかなるわけでもなさそうだけど……)
ただ紛らわしたかったのだ。自分一人で抱える悩みを。
「へい、お待ち」
お盆にティーポットとカップを乗せてスルナが戻ってきた。
「それで、さっそくだけど相談ってなんだ?」
ティーカップを受け取り、サンタは話の切り口を決めていなかったことに気づいた。
「なに、そんな言いにくいこと? いっとくけど、恋バナだったらソッコー帰ってもらうかんね」
「いや、まず訊きたいんだが、お前は糸が見えてるか?」
「ん? どっかほつれてる?」
自分のパジャマとカーディガンを探って、スルナは首を傾げる。
その反応でやはり自分だけかと悟る。そこで本題だった。
昨日の夕方からかけて、今日この瞬間までの事を、うまく纏まらないまでも何とか説明する。
スルナは終始無言で眠そうな眼だったが、真面目な時は大体こんな感じだった。
すべてを聞き終えたスルナの第一声は、
「病院に行け」
「お前は俺の妹かっ」
「いやミナミの妹だ。良くできた妹だってご近所でも評判だわさ」
「お前の兄はどうでもいいし、ご近所の評価をねつ造するな」
スルナは難しい顔をして首を小首を傾げる。
「的確なアドバイスだと思うけど? 前半のイミフな話はともかく、たぶん視神経あたりがいかれてるんじゃない? もしくは脳か。個人的な見立てでは精神異常ではないと……信じてる」
「あくまで信じてるだけかよ」
「いや、うん。でも、病院は行った方がいいんじゃないの?」
それは正論だったし、サンタも考えたことだった。ついでに妹にも言われた。
「なんなら連れてくけど。人混みが辛いってんなら、目を瞑ってても良いし。引っ張ってあげるから」
「やっぱ、それがいいのかな」
「さあね? 選択肢はお前にあるんだもん」
選択肢なんてくだらない──どこぞの女の子が言っていたが、くだらないことなんかない。
今サンタにとって重要な意味を持っていた。
(選択肢は限られているが……)
何も選べないよりマシだった。
「よし、病院に連れてってくれ」
「合点だ。眼科? 脳外科? メンタルクリニック?」
「最後のやつ以外」
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