第一章

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   てきとうな場所に腰を下ろし、そして一息つく。  予想はしていたが、やはりスルナの身体からも糸が伸びていた。  今更驚きはしないが、何だかあまり良い気分でもなかった。まあ、それを相談しに来たのだが。 (相談してどうにかなるわけでもなさそうだけど……)  ただ紛らわしたかったのだ。自分一人で抱える悩みを。 「へい、お待ち」  お盆にティーポットとカップを乗せてスルナが戻ってきた。 「それで、さっそくだけど相談ってなんだ?」  ティーカップを受け取り、サンタは話の切り口を決めていなかったことに気づいた。 「なに、そんな言いにくいこと? いっとくけど、恋バナだったらソッコー帰ってもらうかんね」 「いや、まず訊きたいんだが、お前は糸が見えてるか?」 「ん? どっかほつれてる?」  自分のパジャマとカーディガンを探って、スルナは首を傾げる。  その反応でやはり自分だけかと悟る。そこで本題だった。  昨日の夕方からかけて、今日この瞬間までの事を、うまく纏まらないまでも何とか説明する。  スルナは終始無言で眠そうな眼だったが、真面目な時は大体こんな感じだった。  すべてを聞き終えたスルナの第一声は、 「病院に行け」  「お前は俺の妹かっ」 「いやミナミの妹だ。良くできた妹だってご近所でも評判だわさ」 「お前の兄はどうでもいいし、ご近所の評価をねつ造するな」  スルナは難しい顔をして首を小首を傾げる。 「的確なアドバイスだと思うけど? 前半のイミフな話はともかく、たぶん視神経あたりがいかれてるんじゃない? もしくは脳か。個人的な見立てでは精神異常ではないと……信じてる」 「あくまで信じてるだけかよ」 「いや、うん。でも、病院は行った方がいいんじゃないの?」  それは正論だったし、サンタも考えたことだった。ついでに妹にも言われた。 「なんなら連れてくけど。人混みが辛いってんなら、目を瞑ってても良いし。引っ張ってあげるから」 「やっぱ、それがいいのかな」 「さあね? 選択肢はお前にあるんだもん」  選択肢なんてくだらない──どこぞの女の子が言っていたが、くだらないことなんかない。  今サンタにとって重要な意味を持っていた。 (選択肢は限られているが……)  何も選べないよりマシだった。 「よし、病院に連れてってくれ」 「合点だ。眼科? 脳外科? メンタルクリニック?」 「最後のやつ以外」  
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