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「つまり、その話をまとめると、病院に行った方が良いって事だね」
自分が信じられないものは軽々しく人に話すもんじゃないと改めてサンタは思った。
と言うか、妹なんぞに話したことを今更ながら後悔する。
「あたしね、思うんだけど……そろそろ、そう言うの卒業した方がいいんじゃないかなぁ」
あれが単なる妄想ならそれでいい。けれど、あの時一瞬見た映像は、初めて見たものではないように思えた。
妹に言わせれば、それを含めて妄想なのだそうだが、本当にそうなら妹の言う通り然るべき病院に行った方が良いと思えるほどに、それははっきりとした感覚だった。
「ねえ、聞いてます?」
「聞いてるって。兄に対する敬意の欠片もない罵倒の数々、ちゃんと耳に入ってるさ」
「そこまで酷いことは言ってないよ。お兄様に至っては頭の調子が麗しゅうございますね、って」
「慇懃無礼って辞書で調べてこい」
妹は素直に頷いて、自室へと戻っていった。本当に調べに行ったのだろう。
ようやく静かになった部屋で、あの路上での出来事を思い返す。
突然、目の前に現れて、ナイフを振り回した危険人物。自称、謎の少女。
(まあ……確かに謎と言えば謎だらけだけど)
あの蜘蛛の巣のような映像は何だったのか。記憶のどこかに引っかかるものはあるのだが、それを手繰り寄せることが出来なかった。
気にはなるのだが、またあの女の子に会いたいかと思えば、そうでもない。
(変な宗教にでも捕まった気分だな……)
そんなことを考えつつ、サンタはベッドに身体を放って、いつしかそのまま意識は夢の中へと沈んでいった。
――夢を見ていた。
それが夢だとわかったのは、幼い自分の姿を見つけたからだった。
ただ無垢に遊びに興じていたあの頃。言ってみれば、その頃の自分にとっては、全てが遊びだった。
けれど『それ』は、誰にも真似できない、自分一人の遊び。
そうすることでの結果を、自ら引き起こす物事の可能性を、貪るように楽しみ……
その糸を引いた。
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