地獄の始まり

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ワゴンが店の裏に着けられると、皆手を止めて荷卸しに向かう。 僕達も慌てて先輩達について行った。 バケツリレーでもするように陣形が組まれて行く。 チャンバー(人が入れる大きな業務用の冷蔵庫)は2階にあるために階段は必然的に坊主の役目だ。 やがて大量の荷物がワゴンから運び出され、人の手から手に渡り、リレー形式で次々と片付いていく。 次に来ていない荷物はないか? 間違えて来ていないか? 傷んだ物はないか? 検品していく。 先輩達は自分の仕事に急いで戻る人、来た魚を卸しにかかる人、など大忙しだ。 とにかく荷物が来てから一気にながれが変わる。 朝はいつも忙しかったが 、特にこの時間帯が一番ストレスを感じた・・・・。 料理長から順番に朝食を食べ始めて行く。 とにかく自分の先輩が食べないことには自分は食べられない。 料理長が食べなければ全員食べる事ができない。 食事にも鉄の掟がある。 まず、料理長、副料理長、自分の所属の部署のトップに 『食事いただきます』 と、挨拶をして回らなければいけない。 ※(八寸場、煮方、板、盛り付け、揚場、焼き場があり、各部署だいたい4人~1人で構成) もし忙しくて食べられない先輩がいるときは、同様に挨拶をしてその先輩の食事一式、箸、お茶を用意して初めて食べる事を許される。 食事が終わるとまた同じように順番に 『食事ありがとうございました。』 といって回らなくてはならない。 これは、どんなことがあってもかわらない。 毎日、毎食(昼も夜も)こんなだから疲れてしまう・・・・・。 礼を尽くすのは素晴らしいとは思うが、やりすぎだと思った・・・・・。 すでに地獄は迫っていた・・・・・・。 この日初日だったので洗い物だけを延々とやり、5時には帰らせてもらえた。
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