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どうしても逃げてしまう
指の間から
手の平から
腕の中から
風に攫われるように
突然に
秋の空のごとく
突然に……
待って
行かないで
置いていかないで
キライにならないで―
温もりを失った
手の平を顔に押しつけ
涙をせき止める
それでも尚溢れる滴は
指の間をすり抜け
胸元を汚し
足下に転々とシミを残す
どうすればよかった?
どうして欲しかった?
問いかける虚空には
君の幻
最後に見たやつれた
笑 顔
とても安心した
笑 顔
君との最後の思い出が
どんなものであれ
君が笑顔でよかったよ
けど
答えはどこに問えばいい?
夢に問いかけても
答えは得られず
儚い逢瀬は朝日に消える
そして
やっと答えをくれた君は
美しい宵闇の中
左右に釣り上げた唇で
楽しそうに微笑んだ
あぁ
そうか……
瞼を越えて射す光
発狂を誘う
漂白された一室で
kotae
目覚め導かれた≪記憶≫
そうだった
私は彼女を谷から
助けられなかった
≪Es ist,
weil ich nicht faumlhig war,
vom Tal zu sparen.≫
谷底に吸い込まれていく
君の言葉
アナタだけでも助かって
≪Aber wird bewahrt.≫
聞き入れたくない
君の願い
難しい笑みを携えて
見えない底へと
落ちていったね
その速度に追いつけず
奈落のさらに奥へと
逝ってしまった
温もりを抱いて
この物語を読み解いて
アナタと
≪少女≫は知るでしょう
正 解
≪Antwort.≫は
彼女はもう居ない
≪―Ich werde
verschwinden≫
~Und~
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