箱と男

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路地を進み、もうじき俺の住むマンションがチラチラと見え始めたあたりだろうか、俺の目に異様な光景が入ってきた。 「キャワワワワン!!!!」 「いた・・・痛い痛い!」 人一人入るか入らないかのオーソドックスなみかん箱に、人間と子犬が無理矢理入り込んでいる。 「ギャワワワワン!!!」 「ひぃやぁ!!ごめぇんなさぁぁい!!」 しかも人間のほうが子犬に負けているという情けなさ。 「おい」 「はへ・・・?」 間の抜けた声を出す人間は、やっと俺の存在に気づいたようで、涙目で俺を見つめる。 「な、なんでしょうか・・・?」 子犬に噛み付かれながら何も言わない俺にそう尋ねた。 正直、こっちが聞きたい台詞だ。 なんなんだこいつは?
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