箱と男

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そいつは何も答えない俺に対しておどおどし始めた。 見た目、20過ぎの若い男だが、身なりが古臭いエンジのジャージ上下で、髪は束ねているがそれなりに長い。 みかん箱にどっぷりはまっているので身長はわからないが180cm超えの俺と変わらないくらい長身だろう。 と、ここまで観察してみたが、この男にはなにか違和感を感じてならない。 ホームレスにしては何か雰囲気が違う・・・ どちらかというと・・・ 「夜逃げ・・・?」 「ひぃいい!!ごめんなさいぃ!!」 ぼそりと心の声を漏らすと男は過剰反応を示した。 さきほどの怯えとは比べ物にならないくらい顔を引きつらせて震えだした。 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・」 謝罪を続ける男にウザさを感じ始め、俺はため息をついた。 「謝られても借金取りではないんだが?」 「え・・・ほ、ホントですか・・・?」 なんだ・・・と安心したのか、泣き顔も怯え顔も消え笑顔になった。 コロコロ変わる表情が俺には不思議でたまらない。 俺にはそんなまねできないし、そんなヤツ、はじめて見た。 ・・・面白い。
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