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最後の伝言
ある日。
僕がお家に帰ったら玄関の鍵が閉まっていた。
幼稚園のお友達と近所の公園で遊んで帰るのが遅くなったから怒っているのかも。
お庭にまわる。
いつもご飯を食べる部屋の窓に行った。
謝ったらきっと許してくれるはずだから。
窓に近付くとお父さんとお母さんがお部屋で揺れていた。
天井からぶら下がって揺れていた。
何度か呼んでみたけど返事はない、聞こえないのか振り返ってくれない。
レースのカーテンで僕からもお父さんとお母さんがあまり見えなかった。
どうしていいのか判らない。
お家に帰れない。
僕は要らない子なの?
今から友達のお家に行こうかな。
そこでも僕なんか要らないって言われるのかな?
いっぱい泣きながら歩いた。
どんどん涙が出てくる。
友達のお家に着いたけど中から聞こえる楽しそうな声で僕はもっと悲しくなった。
友達は要る子。
僕は要らない子。
玄関の前にに立ったまた考えてみるけど、やっぱり僕を要ると言ってくれないと思う。
仕方ないから道路の方へ歩き出す。
どこへ行けばいいんだろう?
そうだ!
幼稚園の先生に聞いてみよう。
先生なら僕を要らないって言わない気がする。
うん、大丈夫と抱きしめてくれるよね。
お日様が空から消えてお星様が出てくる。
暗くなってきた道はお化けが出そうで怖かった。
びくびくしながら歩く。
お母さんと一緒ならもう幼稚園に着いてたと思うのに。
寄り道しても早かったと思うのに。
なかなか幼稚園に辿り着けないよ、どうしてなのかな?
電信柱に明かりが点く。
こんなに暗いときに一人で歩くの僕は初めてだ。
幼稚園の前。
僕は驚いてしまった。
いつも開いている場所に鉄の柵があったから。
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