最後の伝言

2/3
前へ
/3ページ
次へ
引っ張ってもがちゃがちゃと音がするだけ。 大きな声で先生の名前を呼ぶけど広場が邪魔して先生の居る所には届かない。 隙間から入れないかな? ダメ。 頭が入らない。 誰も入れないようにしてるの? 先生達にも僕は要らない子? 座り込んでわんわん泣いた。 柵を叩いて泣いた。 待っても待っても先生は出て来てくれないね。 幼稚園が見えなくなったら要らない子だと思わなくて済むかも。 もうどこかへ行こう。 皆が知らない所へ。 誰にも要らない子って言われない所へ。 何度も振り返りながら幼稚園から離れていく。 いきなり幼稚園がたくさん明るくなった。 柵を開けてる。 先生がキョロキョロしてる。 どうして? じっと見ていたら先生は僕の方へ走って来た。 「うちの園児なの?」 なんだ、暗くて僕だとはまだ判らないみたい。 「近所の方から園児が居ると電話があったのよ、お母さんは?」 優しい先生。 いつもの先生。 ほっとしたのか僕の目は涙がいっぱい。 「怒られてお家に帰れないのかな?先生が一緒に謝ってあげるね」 僕の名前を呼び頭を撫でてくれる。 「先生、僕、要らない子じゃないよね?」 先生はにっこり笑ってくれる。 「一度幼稚園に行く?何があったのか先生に教えて欲しいな」 僕の名前が書いたタオルケットにぬくぬくと包まれて温めた牛乳を貰う。 ちょっぴり甘い。 先生達は僕と話してから忙しそうにしてる。 隣の組の先生が泣いていた。 「先生、泣かないで」 頭を撫でてあげたら頷きながら抱きしめられる。 「警察に行くからね」 園長先生が僕の手を握った、そのまま連れられて車に乗り込む。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加