最後の伝言

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警察には男の人がいっぱいいる。 建物の中にいる人はみんな大人で男の人。 子供は僕だけ。 少し怖い、園長先生の手をぎゅっと握る。 「遺書がありました」 男の人が言うと園長先生は困ったような苦しいような顔をした。 「携帯電話には息子さん宛のボイスメモが入ってまして」 大人達が僕の方を向く。 絵本と同じ制服を着た男の人が僕の前に屈む。 「これがお父さんとお母さんからの最後の伝言」 そう言って携帯電話の再生ボタンを押した。 両親には身寄りが無く施設に入る事になった。 義務教育が終わり就職を選んだ俺は今日この施設を出ていく。 旅行鞄に自分の荷物を詰めた。 今やお守りとなったSDカード。 最後の伝言が保存されている。 両親の声。 幼い自分には理解出来なかった言葉。 「一人ぼっちにしてごめんね、悲しい思いをさせてごめんね」 「ご飯を食べる為にお金を借りた人は怖い人でした。借りたよりたくさんのお金を渡さないとあなたをとても酷い目に遇わせると言います」 「家族みんなが助かる方法を見付けられなくてごめんね」 「お父さんとお母さんにはあなたが宝物、無事で居てくれるなら他に何も要らないの」    「自分を大切にして」 「寂しくてもお父さんとお母さんの傍に来てはダメだよ」 「辛い事もあるだろうけどあなたはお父さんとお母さんの自慢の息子だから自信を持って」 「大切な大切な息子への最後の伝言です」
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