最終章―喜びと悲しみの間で…

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俺が帰ってきた時には怜香と遥が椅子に座って話していた。 勝のやつは病室の端で沈んでいた。 「相変わらず目覚まさないな。やっぱりやらない方がよかったのか……」 心の目が覚めないなら記憶なんて関係ないし、やめればよかったな。 今は早く目が覚めてほしい。 前から気持ちがよく変わるけど、自分でもよくわからない。 心の記憶が戻ってほしいのか戻らなくてもいいのか。 俺って安定しないな。 落ち込んじまうよ。 「進くんそろそろ帰らない?」 「もうこんな時間か。そうだな、そろそろ……」 時刻は5時頃、沈みかけた陽の光が病室を茜色に染めていた。 その病室の異変に最初に気付いたのは勝だった。
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