君が残した空

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「酷い夢…」 目覚めの悪い、朝。 思い出したくない出来事を夢に見て目覚めた土曜日の朝は、せっかくの週末を憂鬱にする。 目覚ましは6:30。 仕方なく目覚めた身体は、昨日らしくもなく飲み過ぎたアルコールが僅かに残っている気がした。だから、起きぬけの身体を目覚めさせようと香りの良いボディソープを選んで、シャワーを浴びた。熱めの湯に叩かれて、アルコールも憂鬱な夢も逃げてくれればいいと願いながら。 さっぱりとした身体、髪を乾かしたらわざと健康的な朝食を用意することに決めて。ふわふわのオムレツとべーグルをトーストして、サラダを少し。熱いコーヒーをドリップしたら、オレにして一口味わう。 それでも、ため息は隠しようがない。 「もう昔の事よ…」 自分に言い聞かせるように呟いたけれど。 あんな夢を見たのは、昨日の朝の情報番組で見た芸能人の熱愛報道のせい。 掲載された写真には見覚えがあった。関係ないなんて言いながら、少なからず動揺した自分に気づいてしまったから戸惑った。もう過去のことだと言い聞かせて、忘れたことだと一視聴者の興味本意で眺めて居られたら楽だった。なのに、まだ無理なのだと知った。その事実に打ちのめされた。 昨日、過去を知らない友人との飲み会で、らしくなくグラスを重ねて。それでも上手く酔え無かったから、家でカクテルを口にした。そうしたら、やっと眠気がやってきたのだ。 さよならを告げたのは、私。 メールも電話も消してしまった。 だから、今更伝える言葉はないし、彼の傍には新しい誰かがいるのだから。 また沈みかけた思考を引き戻したら、冷めかけたコーヒーを飲み干した。
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