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「リーリア様、天空神リーリア様! どこにいらっしゃるのですか!?」
「女神さま! いたら返事をしてくださいまし!!」
一目で神殿だと分かる造りの大きな建物の前に、大勢の人々が集まっていた。
その人々は、やや質素だが着心地のよさそうで清潔な衣服を身にまとっている。
だが大神殿前に集まった人々は、その綺麗な服が汚れるのも乱れるのも構わずに、駆け回ったり土の上に座り込んだりしていた。
そんな人々に共通している事は、狼狽、混乱、嘆き、焦り等の感情と行動だ。
人込みを掻き分けて叫んでいる男。
地面に座り込み、ひたすら女神を呼ぶ女。
大人達の狼狽に怯え、泣く寸前の子供達。
そんな我が子の手を、強く握る母親。
世界で一番の大きさを誇る天空大神殿の広場が、町に住む総ての生物にうめつくされていた。
「ほ、他の神々は? この街以外の神々はどうしてるんだ!?」
「そうだ。誰か、大地神殿のレア様にご連絡を……」
「ダメです! それが、レア様もいらっしゃらないそうです。逆に、向こうから連絡が!!」
大勢の混乱の声が、広場を越え街全体に広がる。
それに、この場に集まったのは何も人間だけではなかった。
一ヶ所に固まって震えている妖精。
怯える精霊達は、風を不規則に吹き荒らし、草木を騒めかせ、水に波紋をつくり、大地を無意識に震えさせていた。
――この大混乱が、この街だけではなく世界中の神々が住まう神殿の前で起こっていた――
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